【JCS2019】ウルトラネクロズマGX優勝デッキ平均化考察【ウルネク】
今週末に控えた本シーズンのクライマックス“チャンピオンシップス2019”
この大型大会を前に、様々思案されているプレイヤーも多いことかと思います。
さてさて。
この記事では、長く環境にその名を轟かせている“ウルトラネクロズマGX”をメインアタッカーとした、通称“ウルネク”デッキについて、JCSに向けた最新の考察を行います。長々と書き連ねますが、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。
① 前置き・調査方法
かつて当ブログでは、タッグボルトまでのカードプール環境におけるウルネクデッキについて“平均化”と名付けた手法のもと考察し様々な知見を得ました。
上記リンクにある、そのときの記事の書き出しには「続々と新弾が登場する中で、マイナーチェンジを繰り返しながら、いつも環境トップにくいこんでくるデッキがあります」としました。当時でさえ、名だたる環境デッキの中でも特に息が長く、安定した強さを誇ったウルネクを崇めてそう書き出したのです。
そこから約5か月。ポケカは変わりました。時期とともにカードプールが変わっていくのは流行TCG普遍の原理ですが、特に現代ポケカはその波が早く、急であります。
“ナイトユニゾン”“フルメタルウォール”“ダブルブレイズ”“スカイレジェンド”そして“ミラクルツイン”……ハイペースで新弾がたくさん発売されました。
千葉大会、京都大会と2度の大型大会も挟みました。シティリーグも活発で、大会のたびに新デッキの啓蒙が進みます。
サナニンフ、レシリザ、アンノーンHAND、ゾロアークジュゴン、バンプシン……環境デッキは台頭と衰退を繰り返し、次々と新しいタイプのデッキが研究されています。一時は大いに環境を騒がせたデッキも、新弾を一つ重ねただけで一気に下火になることも珍しくありません。それが現代ポケカなのです。
しかしそれでもなお、毎日どこかのジムバトルではウルネク優勝の情報が挙げられます。
新しいカードの登場により、戦線が動いたとしても、同時にウルネクデッキも新規パーツを手にしたり、それに対するメタカードを忍ばせたりすることで生き残ってきたのです。火力や安定性の面で大きく尖っているこのウルネクですが、柔軟性も非常に高いしなりのあるデッキなのです。
前置きが長くなりすぎました。いつものことですね。
今なお前線で若い環境デッキとタメを張っているこのウルネクデッキについて、ここ半月ほどの時期すなわち「ミラクルツイン初動まで」の時期においてジムバトル優勝などの実績を残したレシピの平均化を行います。
JCSに向けての情報を提供するという動機もありますが、個人的な興味としてはタッグボルトまでの環境からどう変遷したかを数値的に捉えたいというモチベーションもあります。もちろん、ウルネクに対してまだあまり詳しくない方にも良い羅針盤になるように詳しく書いています。
なんであれ、読者の皆様の参考になれば物書きの端くれとして光栄であります。
調査方法
5月17日から6月2日までの期間(スカイレジェンド~ミラクルツイン)において、ジムバトル優勝などの実績を根拠にTwitterに挙げられていたウルトラネクロズマ軸のデッキについて、そのレシピを無作為に20個抽出し各種カードの平均採用枚数を求めた。
その数字をもとに、JCS2019を直前に控えた今のウルネクデッキの情勢を考えます。JCSに対してという目的もありますが、タッグボルトまでのそれとの比較という観点も重要視しています。
では中身に移りましょう。
② ポケモン編
ウルネクデッキを構成する各種ポケモンの搭載枚数について考えます。
・ウルトラネクロズマGX 平均採用枚数1.95枚
本デッキのメインアタッカーとなるウルトラネクロズマGX。抽出したデッキではほとんどが2枚採用であり、「サイド落ちを考慮するが、初手に前にいるor手札に握っている必要はない」という枚数に落ち着いています。タッグボルト環境のときも2.10枚であったということで、ここに大きな差はありませんでした。
・カラマネロライン 平均採用枚数4.0枚-4.0枚
ウルネクデッキのみならず、超エネルギーを回せるデッキでは常にシステムにいるこのポケモン。常時変わることなく、4-4構成を維持していました。なんならメタモン◇(平均採用枚数0.05枚)もいれてマーイーカを擬似5体としている構築さえ見られました。このデッキの根幹でありますからね。ここは今も昔も変わらない4-4採用であります。
・ギラティナ 平均採用枚数1.75枚
ウルネクデッキを支える非GXポケモン。トラッシュからやってきてダメカンを置くムーブも、サイコリチャージでエネルギーを貰ってシャドーインパクトを打つムーブも思っている以上に強力です。サイドレース調整の観点からもそうですし、フーパなど非GXでないと根本的に処理が難しいカードにも対応できます。
こちらの採用枚数はだいたい2枚が普通でした。枠の都合から1枚しかいないデッキもありましたが、入っていないというレシピはあり得ませんでした。
・ジラーチ 平均採用枚数2.15枚
ジラーチ以前のウルネクはもっと様々な形がありましたが、今ではそのほとんどがジラーチを採用する型となっています。ジラーチの“ねがいぼし”でトレーナーズをサーチすると同時に、ベンチではウルネクがカラマネロのサイコリチャージでエネルギーを貰う。エスケープボードを貼ったジラーチが戻ってきてウルネクと入れ替わる、という動きがかみ合っているからです。
そのジラーチの採用枚数ですが、2.15枚とおおむね2枚投入が主流でありました。ピン挿しはなく、3枚挿しがたまにあるくらい。この2.15枚というのはタッグボルト時代と遜色なく、これが最適解であることを思わせます。
・カプ・テテフGX 平均採用枚数0.75枚
安定性を高めるカードとして高い汎用性を誇るこのカード。タッグボルト時代のウルネクだと平均1.1枚であり採用枚数が下がっています。昔だと1枚採用は手堅く、2枚採用で固めるというデッキも珍しくありませんでした。しかし今は入っていないデッキも目立つくらい、カット傾向が見えます。
・ゲンガ―&ミミッキュGX 平均採用枚数0.65枚
もう1枚のアタッカーとして、登場から採用が検討されているのがこのゲンミミGX。早いターンから相手を縛りダメージを与えていけるという点で活躍できます。自分が後攻スタートになったとしても、後1からホラーハウスGXで相手のターンを飛ばすことができるので、先攻に入れ替わったと擬似的に進めることができます。もちろんこればっかりに枠を割いていられるわけではないので、ピン挿しないしは不採用が定番でした。タッグボルト時代だと平均採用枚数は0.5枚でした。
・ミュウ 平均採用枚数0.63枚
やってきました。今回検討するポケモンのなかで一番おもしろいのはこの“ベンチバリア”のミュウです。というのも、このカードは“ダブルブレイズ”に収録されたものでタッグボルト時代には存在しなかったカードだからです。
平均採用枚数をご覧いただきますと分かりますように、このミュウのピン挿しがウルネクの中では少し流行っています。それによりどこか枠を空けないといけないわけですが、それがどのカードであるかを知るためにもこの平均化考察の比較は有意義であると考えています。
さて、このミュウの採用動機ですがウルネクデッキとしては2点あります。
1点目は特性“ベンチバリア”です。
ウルネクデッキはカラマネロラインやジラーチなど、低HPのシステムポケモンを多数並べて使います。それ故にベンチにダメージを与えるばら撒き系に脆いという弱点があります。そこでこの“ベンチバリア”です。ワザによるダメージはすべて防げます。
2点目は1エネ起動のワザ“サイコパワー”です。
ダメカン3個を相手のポケモンに自由に乗せるというものですが、これがウルネクとよく合うことよく合うこと。このダメカン3つできぜつを奪うという局面はあまりありませんが、ウルトラネクロズマGXのワザと噛みあうのです。
ミラーマッチないしは超バレットなどで目にする相手のカラマネロに対してはこのサイコパワーで30削っておくだけで、ウルネクの“めつぼうのひかりGX”でのきぜつ圏内に入ります。また、メインワザ“フォトンゲイザー”がエネルギーによる飛び飛びのダメージワザなので、この30で1エネ分稼げることだってあるわけです。
このミュウ自身も超タイプですからミステリートレジャーで必要なときに呼べますし、1エネでやりたいことがすべてできてしまうので腐ることがなかなかありません。
そんな良いことづくめなミュウですが、そのためにどの1枚を開けるかが興味深いところであります。
もちろん、このようなメリットがあったとしても「採用しない」という選択肢もあるわけです。今回の調査の結果、抽出された20デッキの中では平均採用枚数0.63枚という結果でした。すべてピン砂嘴でしたが、それなりの採用率です。
・カプ・コケコ 平均採用枚数0.4枚
入れ替え要員・ばらまき要員ということで採用が検討される“かいてんひこう”カプコケコ。採用率は20デッキ中4デッキにピン挿しということでそこまで多くはありませんでした。まぁスケボーに乗ったジラーチがいるわけで、なかなかベンチ枠を圧迫したくないですからね。
③ サポート編
続いて、デッキのエンジンであるサポートについて見ていきます。
・リーリエ 平均採用枚数3.75枚
・シロナ 平均採用枚数2.00枚
・エリカのおもてなし 平均採用枚数0.75枚
ドロー系サポートはこのような平均枚数になりました。1ターン目にリーリエで積極的に8枚引きを狙っていくスタイルですね。これは今も昔も変わりません。
シロナの採用枚数も大きくは変わらずですね。ただデッキにより結構ばらつきもあり、シロナに1枚も頼らない構築も一部見られました。
エリカのおもてなしについてはグッと採用枚数が減っています。以前の調査時期ではタッグボルト後ということもあって人気だったのかもしれません。また、ベンチを絞ることをメインプレイングとするデッキも少なくないですから効果薄ということでこの枚数になったのもあるでしょう。
・グズマ 平均採用枚数3.15枚
続いてグズマ。このデッキでは、ウルネクを後ろに下げるとい役割もあってより重要です。採用枚数はほぼほぼ3枚積み、一部のデッキで4枚積みという結果でした。過去の調査では3.3枚でしたから、ここは変動なしですね。
・アセロラ 平均採用枚数0.70枚
多くのウルネクデッキは上記ドロサポ+グズマでサポートが構成されていましたが、一部のデッキでは他に数種類サポートの添加が見られました。一番採用があったのはこのアセロラでした。平均採用枚数は0.70枚となっています。
タッグボルト時代での調査だとアセロラの採用はほとんど見られずであり、これは大きな変化と言えます。役目をある程度終えたゲンミミGXのケアが真っ先に思いつきますがそれで正解でしょうか。後1からしっかり役目を果たし、後ろでウルネクも控えた中で、そこでゲンミミを倒されてサイド3枚持っていかれるのか、しっかりウルネクで殴っていけるのかを比較すると圧倒的に後者にアドがあります。
サポートについては、あとはごく少数のデッキにおいてジャッジマンやロケット弾のいやがらせなどのハンドリフレッシュ系があった程度で、おおむねドロソ+グズマで固定されていました。
④ グッズ編
・ハイパーボール 平均採用枚数3.20枚
・ネストボール 平均採用枚数3.40枚
・ミステリートレジャー 平均採用枚数3.90枚
まずはポケモンサーチ系を見ていきましょう。ここでも少し過去からの変化が垣間見えます。
問答無用で4枚採用だったハイパーボールでしたが、今回の調査時期だと逆に3枚が主流でした。ハイパーボールでしか触れないカードがこのデッキにはほとんどないこと、ジラーチでボールを拾える頻度も高いことなどの背景がこのデッキにはあります。そこで、ミュウやアセロラなどの新傾向カードの枠に対して、ここを切ったという流れでしょうか。
一方で低コストのミステリートレジャーはほとんど4枚採用、ネストボールもハイパーボールより多い採用となっていました。
・リセットスタンプ 平均採用枚数0.70枚
これもタッグボルト時代にはなかった優れもの。相手のハンドをリフレッシュする手段は、序盤で相手がキーカードを抱えてきたときも重要ですし、サイド数と連動して終盤で相手の動きを止める動きも重要です。それをグッズでできるのだからこのカードは素晴らしいのです。
もともとジャッジマンなどのハンドリフレッシュサポート採用が少なかったウルネクですが、やはりこのリセスタの手軽さには注目したようでそれなりの数のデッキで採用が見られました。少ない枚数で適時打てるかどうかは結構怪しいので見送ったデッキも多かったですが。
・ポケモンいれかえ 平均採用枚数2.50枚
・あなぬけのヒモ 平均採用枚数0.44枚
いれかえグッズとしては、ポケモンいれかえが2~3枚採用、あなぬけのヒモがデッキによればピン挿しといったところでした。
・こだわりハチマキ 平均採用枚数1.05枚
2枚採用でもいいんじゃないかなと思ってしまいますが、そこは枠の都合上でしょうか。1枚採用が主流になっています。ギラティナが削る10と合わせてうまくダメージ調整をすることがウルネク運用上の一つ重要なプレイングですね。
・レスキュータンカ 平均採用枚数0.90枚
これも難しいところですよね。複数枚あってダボつくのも癪ですから、やはり1枚採用が無難なんでしょうね。3枚目のウルネクを準備したり、カラマネロラインを山に戻したりが主な使い方でしょうか。山札か手札からトラッシュを要求される場面はミストレかハイボぐらいしかないのがこのデッキですから、タンカは必需ではない気もします
・エスケープボード 平均採用枚数1.85枚
ジラーチと抱合せで採用するこのエスケープボードは、他のジラーチ採用デッキと同じセオリーでほとんどが2枚採用でした。
他には、フィールドブロアー、のろいのおふだ、ともだちてちょうなどがデッキによれば採用されていました。無人発電所でビタ止まりするデッキではありませんから、スタジアムもトキワの森ではがしていくだけでことなきを得そうです。
また、のろいのおふだも面白いですね。システムポケモンでありこちらから攻撃はしないカラマネロがタダでは倒れないようになります。
⑤ スタジアム編
・トキワの森 平均採用枚数2.75枚
ウルネクのスタジアムはすっかりトキワの森で固定されました。サイコリチャージのために超エネルギーをトラッシュして超エネルギーをサーチしてくる動きも、薄い鋼エネルギーを的確にサーチしてくる動きも、ウルネクを効率よく動かすための重要なムーブです。
平均採用枚数は2.75枚であり、およそのデッキで3枚採用でした。
⑥ エネルギー編
・超エネルギー 平均採用枚数6.8枚
・鋼エネルギー 平均採用枚数2.8枚
・ビーストエネルギー 平均採用枚数0.45枚
最後にエネルギーカードについて見ていきましょう。
タッグボルト時代での考察と同様、超:鋼:ビ = 7:3:1が多いわけですが、超エネルギー6枚構築や鋼エネルギー2枚構築も一部見られました。また、ビーストエネルギーの採用割合は明らかに減少し平均0.45枚採用で、入れていないデッキのほうが多かったことになります。他のカードのスペースどりという観点から泣く泣く削ったという構築なのでしょう。
⑦ 結論とまとめ
こんな感じの60枚でした。
タッグボルト時代以降の新規カードとして有力だったのはミュウとリセットスタンプでした。これを採用しようという動きはある程度明確にありました。そこで削るカードとして候補に上がりやすかったのが、今回出てきた数字で分析する限りカプ・テテフGX、ハイパーボール、そしてエネルギー関連でした。
【まとめ】
・ウルネクは今も昔も2枚採用が丸い。
・ゲンミミGXを添える構築もいまだ人気である。
・カラマネロラインは安定の4-4。ここは譲れない。
・ミュウの存在は見逃せず、ピン挿しを採り入れたデッキも多い。
・同様にリセットスタンプも浸透している。
・よって、既存のセットから何を抜くかが検討されるが、多かったのはテテフ、ハイボ、そしてエネルギーの1枚カットだった。
・ドロソは初手リーリエ素引きを起点に。エリカにはほとんど頼らない。
・サポートを欲張り過ぎない。ドロソ+グズマ、アセロラくらい。アセロラの採用は昔よりも増えた。
・エネルギーは7:3:1の流れを汲んでいるが、これよりも少なくする構築も流行ってきている。
JCSでウルネクに関わる皆さん、ぜひ頑張ってください!!